パニック障害の治療

くすりによる治療

監修:金沢大学 名誉教授
アイリスメディカルクリニック
院長 越野 好文 先生

パニック障害の治療は、「認知行動療法」と「くすり」の2本柱で行います。認知行動療法は、病気を正しく理解し、パニック発作に対する過度の不安を無くし、避けている状況に慣らしていくなどの治療をします。また、くすりによる治療は、ベンゾジアゼピン系抗不安薬とSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という作用の異なる2種類を主に用います。

イメージ図 (1)ベンゾジアゼピン系抗不安薬 青斑核のノルアドレナリン分泌調整を行い、パニック発作を抑える。効果に即効性がある。 (2)SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬) 大脳辺縁系のセロトニン分泌調整を行い、発作に対する不安を取り除く。効果はゆっくりあらわれる。 イメージ図 (1)ベンゾジアゼピン系抗不安薬 青斑核のノルアドレナリン分泌調整を行い、パニック発作を抑える。効果に即効性がある。 (2)SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬) 大脳辺縁系のセロトニン分泌調整を行い、発作に対する不安を取り除く。効果はゆっくりあらわれる。

(1)ベンゾジアゼピン系抗不安薬について

パニック発作の原因は、脳の青斑核という部位にあると考えられています。青斑核には警報装置のような役割があり、通常、危険を感知するとノルアドレナリンという物質を分泌して、脳内の不安に関係する部位を刺激し、強い不安や恐怖を感じさせます。
ところが、パニック障害になると何も危険な状態がないにもかかわらず、青斑核がノルアドレナリンを分泌してしまい、過剰なノルアドレナリンに刺激され、呼吸困難やめまい、動悸などの強いパニック発作が生じます。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬の主な働きは、青斑核の誤作動を改善してパニック発作を抑えることです。

(2)SSRIについて(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)

パニック発作が起きなくなったものの、発作に対する不安が残り、そのために電車に乗れない、人ごみの中に行けないなどの生活に支障をきたした状態がつづくことはまれではありません。脳内の神経伝達物質であるセロトニンは気分や不安、衝動、あせり、イライラなどの調整を行っています。SSRIはこのセロトニンの作用を高める働きがあり、SSRIを服用すると徐々にくすりの効果があらわれ、患者さんのパニック発作に対する不安や心配、こだわりが薄れていきます。

くすりを服用するときの注意点

治療を始めて1~2ヵ月の間

SSRIの効果があらわれるまで、即効性のあるベンゾジアゼピン系抗不安薬を一緒に服用します。
パニック障害の治療の基本はSSRIですが、SSRIは十分な効果があらわれるまでに6~8週間かかります。そのため、治療の初期には即効性のあるベンゾジアゼピン系抗不安薬を一緒に服用して、パニック発作を起こらないようにします。

飲み始めに副作用があらわれることがあります。
SSRIは飲み始めに吐き気、むかつき、下痢、便秘などの消化器系の副作用があらわれることがあります。多くの場合しばらく服用をつづけているとおさまりますが、気になるときは医師に相談してください。また、飲み始めに一時的に不安やイライラが強まることがあります。飲む量を調節するなどの対処方法がありますので、勝手に服用をやめずに医師に相談してください。

治療後しばらくたって、症状が安定した頃

発作が起きなくなっても、自分の判断でくすりの服用をやめてはいけません。
くすりによって症状がコントロールされているだけで、残念ながらまだ完全には回復していません。くすりの服用をやめると症状が逆戻りしてしまう可能性があります。

突然くすりの服用をやめると、さまざまな症状があらわれることがあります。
パニック障害が完全によくなり、くすりの服用をやめるときは徐々に服用量を減らしていきます。突然、服用を中止すると、頭痛やめまいなどの中断症状があらわれることがあります。飲み忘れによっても中断症状がみられますので、飲み忘れのないように気をつけてください。

この他にも気になる症状があらわれた場合には、医師または薬剤師にご相談ください。